ラガーとは、低温で発酵・熟成させる「下面発酵」製法を用いたビアスタイルの総称です。世界で最も広く飲まれているビールのカテゴリーであり、すっきりとしたのどごしとクリーンな味わいが特徴です。「ラガーってどんなビール?」「エールとは何が違うの?」という疑問には、この記事で順を追って答えていきます。
| 系統 | - |
|---|---|
| 発祥 | —(総説) |
| 苦味(IBU) | スタイル規定なし |
ラガーの味わい・特徴
ラガーの最大の特徴は、そのクリーンでクリスプな口当たりにあります。低温でゆっくりと発酵・熟成させることで、酵母由来のフルーティな香りや複雑なエステルが抑えられ、麦芽とホップの素材そのものの風味が前面に出やすくなります。
香りは穀物やパンのような麦芽の甘さが中心で、ホップのアロマはスタイルによってほぼ無きに等しいものから、きりっと引き締まるほど主張するものまで幅があります。味わいは、炭酸のはじける感覚とともにすっと流れていく軽快さが基本にあり、後口に余韻を引きずりません。喉に滑り込む感覚は、磨き上げられたガラスの表面を指でなぞるような、余分なものがいっさいない清潔感とでも表現できるでしょう。
一方、スタイルの幅は驚くほど広く、淡色のピルスナーから深みのあるデュンケル、黒く焼き色の濃いシュヴァルツビアまで、色・苦味・麦芽感はスタイルによって大きく異なります。「ラガーだからあっさり」とは一概には言えないところが、このカテゴリーの奥深さです。
ラガーの歴史と由来
ラガーの醸造技術は、19世紀のヨーロッパ、とりわけドイツ・バイエルン地方を起点とするとされています。「ラガー(Lager)」という語はドイツ語の「貯蔵」を意味し、冬の間に冷たい洞窟やセラーで低温熟成させる醸造技術がその語源と言われています。
下面発酵酵母が比較的低い温度を好む性質を持つことは、冷蔵技術のない時代には夏場の醸造を困難にしていたとされます。19世紀後半に機械式冷蔵が普及すると、通年醸造が可能になり、ラガーは一気に世界へ広まっていったと考えられています。バイエルンで培われたラガー醸造技術は中央ヨーロッパのボヘミア地方(現在のチェコ)にも伝わり、1842年にピルゼン(プルゼニュ)で誕生したピルスナーはその代表例とされています。現代ラガー文化の礎を築いたと言われるピルスナーは、今日もなお世界で最も広く飲まれているビアスタイルです。
現在では、ドイツ・チェコ・日本・アメリカをはじめ、ほぼすべての国の主要ブランドがラガー系のビールを製造しており、世界で最も消費量の多いビールスタイルのカテゴリーとされています。
エールとの違い
ラガーを理解する上で欠かせない比較相手が、もう一つの大きな系統「エール」です。両者の最大の違いは酵母と発酵温度にあります。ラガーが比較的低温(一般に10℃前後以下とされる)で発酵する「下面発酵酵母」を使うのに対し、エールは比較的高温(一般に15〜25℃前後とされる)で発酵する「上面発酵酵母」を使います。この違いが、フルーティで複雑な香りを持つエールと、クリーンですっきりしたラガーという、根本的な味わいの差を生み出します。「ラガーは飲みやすい」と言われることが多いのも、この発酵プロセスがもたらすクリーンさに由来しています。エールについて詳しく知りたい方は エールとは もあわせてご覧ください。
主なラガースタイル
ラガーは一つのスタイルではなく、複数のサブスタイルの総称です。主なものを以下に挙げます。
ピルスナー: 世界で最も飲まれているラガースタイル。淡い黄金色でホップの爽やかな苦みが特徴。チェコ式とドイツ式で個性が異なります。ピルスナー
ミュンヘナー・ヘレス: バイエルン地方生まれの淡色ラガー。ピルスナーよりも麦芽の甘さが前に出た、穏やかな味わいが特徴です。ヘレス
デュンケル: 「暗い」を意味するドイツ語の名を持つ褐色ラガー。ローストした麦芽によるチョコレートやパンの風味が楽しめます。デュンケル
シュヴァルツビア: 「黒いビール」を意味する漆黒のラガー。見た目の印象とは裏腹に、口当たりは軽快でラガー系らしいすっきりとした味わいを保っています。シュヴァルツビア
メルツェン/オクトーバーフェスト: 秋の収穫祭に合わせて醸造される琥珀色のラガー。麦芽の豊かな風味と穏やかな甘みが特徴です。メルツェン
アメリカン・ラガー: 19世紀後半から20世紀にかけてアメリカで発展したスタイル。とうもろこしや米などの副原料を使い、極めてライトで飲みやすいのが特徴です。アメリカン・ラガー
こんな人におすすめ
ビールを飲み始めたばかりで、まずクセのない飲みやすいスタイルから試したいという方にラガーは最適です。また、食事中に料理の邪魔をしない、脇役に徹するビールを探している方にも向いています。一方、複雑な香りや個性的な風味を求める方は、エールの世界を探索してみると新しい発見があるかもしれません。エールとは
スタイルをより深く知りたい方は、各サブスタイルの個別記事もあわせてご覧ください。
よくある質問
ラガーとエールの違いを一言で言うと? 発酵に使う酵母の種類と温度が異なります。ラガーは低温でゆっくり発酵させるためクリーンですっきりした味わいになり、エールは比較的高温で発酵させるためフルーティで複雑な香りが出やすい傾向があります。どちらが「上」ということはなく、目指す味わいの方向性が異なります。
日本のビールはラガーが多いの? 国内の大手メーカーが製造する缶・瓶ビールの多くはラガー系(特にピルスナースタイル)とされています。そのため、日本でごく一般的に飲まれているビールのイメージはラガーに近いと言えます。クラフトビールの世界ではエールも多く流通していますが、スーパーや居酒屋で目にするものはラガーが主流です。
ラガーはアルコール度数が低めですか? スタイルによって幅があるため一概には言えません。一般的な淡色ラガーは標準的な度数のものが多いとされますが、高アルコールのラガースタイルも存在します。各スタイルの詳しい数値は、それぞれの個別記事冒頭のスペック表をご参照ください。
※ お酒は20歳になってから。20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。

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